クレーン関連用語集:初心者でも分かる基本用語20選
2025.08.22
はじめに
ユニック車(クレーン付きトラック)を初めて扱う方や、これから導入を検討されている方にとって、専門用語の理解は大きな壁となることがあります。本記事では、ユニック車やクレーン作業に関連する基本的な用語を20選ピックアップし、初心者の方でも理解しやすいように解説します。これらの用語を理解することで、ユニック車の操作や安全管理、メンテナンスについての知識が深まり、効率的かつ安全な作業につながるでしょう。
構造に関する基本用語
「ユニック」とは、古河ユニックが製造・販売しているトラッククレーンの商標名です。現在では、トラックに搭載されたクレーン全般を指す一般名称としても広く使われています。正確には「ユニッククレーン」や「ユニック車」と呼ぶべきですが、業界では単に「ユニック」と呼ぶことが一般的です。トラックの荷台に油圧式クレーンを搭載した車両で、建設現場や資材運搬など多様な場面で活躍しています。
クレーンの「腕」に当たる部分で、荷物を吊り上げるために伸縮する筒状の構造体です。多段式のものが一般的で、4段、5段などと表記されます。段数が多いほど、より遠くまでリーチできる一方で、最大吊り上げ荷重は減少します。ブームの材質には高張力鋼が使用され、軽量でありながら高い強度を実現しています。
クレーンの先端に取り付けられた、荷物を吊り上げるための金具です。通常は「吊りフック」と呼ばれる形状で、安全装置としてラッチ(フックから荷が外れるのを防ぐ金具)が付いています。フックは使用頻度が高く摩耗しやすい部品のため、定期的な点検が必要です。亀裂や変形が見られる場合は即座に交換すべき重要部品です。
クレーン作業時に車両の安定性を確保するために、車両の側面から張り出す支持脚のことです。通常は左右に装備され、油圧で操作します。アウトリガーを十分に張り出し、地面にしっかりと接地させることで、クレーン作業中の車両転倒を防ぎます。軟弱地盤では専用の敷板(アウトリガーマット)を使用して、地面への荷重を分散させる必要があります。
フックを支え、荷物を吊り上げるために使用される金属製のロープです。複数の鋼線を撚り合わせて作られており、高い強度と柔軟性を兼ね備えています。使用に伴い摩耗や損傷が進むため、「素線切れ」や「キンク(よじれ)」などの異常がないか定期的に点検する必要があります。安全基準では、一定以上の損傷が見られる場合は交換が義務付けられています。
操作・性能に関する用語
トラックのエンジンの動力を油圧ポンプに伝達するための機構です。PTOを「入れる」ことで、エンジンの力をクレーンの操作に使用できるようになります。通常はキャブ内のレバーやスイッチで操作します。PTOを入れたまま走行すると、油圧系統や変速機に重大な損傷を与える可能性があるため、必ずクレーン作業後にPTOを「切る」ことが重要です。
クレーンが安全に持ち上げられる最大の重量を示します。この値はブームの長さや角度、アウトリガーの張り出し状態によって変わります。通常は「○トン×○メートル」という形で表示され、例えば「2.93トン×2.5メートル」は、ブームを2.5メートル伸ばした状態で最大2.93トンまで吊り上げられることを意味します。定格総荷重を超える作業は法律で禁止されています。
無線操作装置を使用してクレーンを遠隔操作することです。操作者がクレーンから離れた位置から荷物の状態を確認しながら操作できるため、より安全かつ正確な作業が可能になります。ラジコン装置の電池切れに備えて、常に予備の電池を携帯しておくことをお勧めします。また、万一の故障に備えて、手動操作の方法も熟知しておくことが重要です。
使用後のフックを収納位置に格納する機能です。ブームを格納するときに、フックが宙に垂れ下がったままだと危険なため、専用の格納装置にフックを固定します。近年のモデルでは自動フックイン機能を搭載したものも多く、ボタン一つでフックを自動的に格納位置まで巻き取ることができます。
クレーンの安全装置の一つで、ブームの長さ、角度、荷重などを常に監視し、定格総荷重を超える危険な操作を防止するシステムです。モーメントリミッターが作動すると警告音が鳴り、危険な操作を自動的に停止させます。法律で設置が義務付けられており、故障した状態での使用は禁止されています。定期的な点検と校正が必要な重要装置です。
安全・法規制に関する用語
荷物をワイヤーロープやチェーンスリングで包み、フックに掛ける作業のことです。荷物の重心位置や形状に合わせた適切な玉掛け方法を選択することが、安全な吊り上げ作業の基本となります。「玉掛け作業」を行うには、労働安全衛生法に基づく「玉掛け技能講習」の修了が必要です。不適切な玉掛けは荷崩れや落下事故の主な原因となるため、十分な知識と経験が求められます。
クレーンが定格総荷重に近づくと、警告音や表示灯で操作者に危険を知らせる装置です。多くの場合、負荷が定格の90%程度に達すると警告を発し、100%を超えるとクレーン操作を自動的に停止します。この装置の無効化や改造は法律で禁止されており、重大な事故の原因となります。日常点検で必ず作動確認を行うべき重要な安全装置です。
クレーンの旋回中心から荷物の吊り点までの水平距離を指します。この距離が大きくなるほど、クレーンが安全に持ち上げられる荷重は減少します。クレーンの「能力曲線」は通常、この作業半径と吊り上げ可能な荷重の関係を示したグラフで表されます。作業計画を立てる際は、必要な作業半径での吊り上げ能力を事前に確認することが重要です。
法令により、一定規模以上のクレーンには検査証の備え付けが義務付けられています。この検査証は労働基準監督署から交付され、2年ごとの性能検査に合格しなければ更新できません。検査証には、最大定格荷重や製造年月日、検査履歴などが記載されており、常に車両に備え付けておく必要があります。検査証がない状態でのクレーン作業は法律違反となります。
吊り上げ荷重が1トン以上5トン未満のクレーンを操作するために必要な資格です。5日間程度の講習と修了試験に合格することで取得できます。ユニック車の多くはこの範囲に該当するため、操作者はこの資格を取得する必要があります。なお、5トン以上のクレーンを操作するには、より上位の「移動式クレーン運転士免許」が必要となります。
メンテナンス・点検に関する用語
労働安全衛生法で義務付けられている、年に1回以上実施すべきクレーンの定期点検です。専門の検査業者による総合的な点検が行われ、各部の摩耗、亀裂、油漏れなどが詳細にチェックされます。年次点検の結果は記録として保存する義務があり、不良箇所が見つかった場合は速やかに修理を行う必要があります。安全な作業のためには、法定点検以外にも日常的な自主点検が重要です。
クレーンの動力を伝達する油圧システムに使用される特殊な油です。一般的なエンジンオイルとは異なり、高い圧力や温度変化に耐える性能を持っています。定期的な交換が必要で、通常は年次点検時や500〜1000時間の使用ごとに交換します。油の汚れや劣化は油圧システムの故障の主な原因となるため、定期的な点検と適切な交換が重要です。
可動部分に潤滑グリースを注入する作業です。ブームの伸縮部、旋回ベアリング、各ピン部などが対象となります。適切なグリースアップにより、部品の摩耗を防ぎ、スムーズな動作を維持できます。使用頻度にもよりますが、一般的には1〜3ヶ月ごとに実施することが推奨されています。特に雨や粉塵の多い環境で使用する場合は、より頻繁なグリースアップが必要です。
クレーン全体を分解して行う大規模な点検・整備作業です。使用年数や使用頻度によりますが、通常は5〜10年ごとに実施します。油圧シリンダーの分解清掃、シール類の交換、ワイヤーロープの全面交換などが行われ、クレーンを新品同様の状態に復元します。コストはかかりますが、安全性の確保と長期使用のためには不可欠な整備です。
クレーンで吊り上げている荷重を表示する計器です。モーメントリミッターの一部として組み込まれていることが多く、現在の荷重が定格荷重に対してどの程度なのかを常に監視できます。デジタル表示やバーグラフ表示など、様々なタイプがあります。荷重計の表示は定期的に校正する必要があり、不正確な場合は危険な過負荷状態に気づかないリスクがあります。
まとめ
この記事では、ユニック車に関連する基本的な20の用語を解説しました。これらの用語を理解することは、ユニック車を安全かつ効率的に運用するための第一歩です。特に安全に関わる用語や法規制については、単に知識として持つだけでなく、日々の作業の中で常に意識することが重要です。
堀野モータースでは、中古ユニック車の販売だけでなく、初心者の方向けの操作指導や安全教育にも力を入れています。「用語は分かったけれど実際の操作に不安がある」「もっと詳しく知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。
また、この用語集は基本的な用語のみを取り上げていますが、ユニック車の種類や用途によってさらに専門的な用語もあります。今後も「ユニック車用語辞典」シリーズとして、より専門的な内容や特定の作業に関連する用語集を順次公開していく予定です。
安全なユニック車の運用には正しい知識が不可欠です。この用語集が皆様の安全作業の一助となれば幸いです。
※本記事の内容は2025年7月時点の情報に基づいています。法規制や技術用語は変更される可能性がありますので、最新の情報については関係機関や専門家にご確認ください。
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