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油圧システム用語解説:ユニック車の動力源

2025.08.22

はじめに

ユニック車(クレーン付きトラック)の動力源となる油圧システムは、トラックのエンジンパワーを利用してクレーンに大きな力を伝えるための重要な機構です。しかし、その専門用語や仕組みは初心者には理解しづらいことが多いものです。この記事では、ユニック車オーナーや操作者が知っておくべき油圧システムに関する基本的な用語と概念を、専門的な知識がなくても理解できるよう解説します。

 

油圧システムの基本原理と用語

  1. 油圧(Hydraulic Pressure)

油圧とは、液体(作動油)を利用して力を伝達する技術です。パスカルの原理に基づき、密閉された容器内の液体に加えられた圧力は、すべての方向に均等に伝わります。この原理を応用することで、小さな力を大きな力に変換できます。例えば、小さなポンプで発生させた圧力を、大きな断面積を持つシリンダーに伝えることで、何トンもの重量物を持ち上げることができるのです。

 

ユニック車では通常、14〜21MPa(メガパスカル)程度の高圧を使用します。これは水道の蛇口の圧力の約140〜210倍という非常に高い圧力です。この高圧により、重いブームや荷物を持ち上げるパワーが生み出されます。

 

  1. 作動油(Hydraulic Fluid)

作動油は油圧システム内を循環し、力を伝達する媒体となる特殊な油です。単なる潤滑油とは異なり、高圧下での安定性や温度変化への耐性、防錆性能などが求められます。通常は淡黄色または琥珀色をしており、汚染や劣化すると色が濃くなったり、濁ったりします。

 

作動油の状態は油圧システムの健康状態を示すバロメーターとも言えます。新品の作動油は透明な淡黄色ですが、使用とともに徐々に色が濃くなります。しかし、極端に黒ずんだり、金属片が混入している場合は、システム内の異常を示しています。定期的な作動油の点検と交換は、油圧システムの寿命を延ばす上で非常に重要です。

 

  1. 油圧回路(Hydraulic Circuit)

油圧回路とは、作動油が流れる経路全体を指します。ポンプ、バルブ、シリンダー、配管などで構成され、各部品が連携して動作することで、目的の動きを実現します。基本的には「圧力をかける→方向を制御する→力に変換する」という流れで機能しています。

 

油圧回路は電気回路と同様に、各部品を線(この場合は配管)でつないだネットワークであり、システム全体の設計が重要です。適切に設計された油圧回路は、効率的かつ安全にパワーを伝達できます。

 

主要な油圧部品と用語

  1. 油圧ポンプ(Hydraulic Pump)

油圧ポンプはシステム内に圧力をかける「心臓」の役割を果たす部品です。エンジンの動力を受けて回転し、作動油を吸い込んで高圧で送り出します。ユニック車では主にギアポンプやピストンポンプが使用されます。

 

ポンプの性能は「吐出量(L/min)」と「最高圧力(MPa)」で表され、これらの値が大きいほど、より重い荷物をより速く持ち上げられます。しかし、ポンプの摩耗や損傷は油圧システム全体の性能低下につながるため、定期的な点検が不可欠です。

 

  1. コントロールバルブ(Control Valve)

コントロールバルブは作動油の流れの方向や量を制御する「信号機」のような役割を持つバルブです。操作レバーの動きに応じて内部の弁が切り替わり、シリンダーへの油の出入りを調整します。ユニック車の操作パネルに並ぶレバーは、それぞれ異なるコントロールバルブを操作しています。

 

近年のモデルでは電子制御バルブも増えており、より繊細な操作が可能になっています。これにより、微調整が必要な精密作業も円滑に行えるようになりました。

 

  1. 油圧シリンダー(Hydraulic Cylinder)

油圧シリンダーは油圧の力を直線運動に変換する部品です。ピストンとシリンダーの組み合わせで構成され、作動油の圧力によってピストンが押し出されることで、ブームの伸縮や上下動などを実現します。

 

シリンダーの性能は「ボア径(内径)」と「ストローク(行程)」で表現され、前者が大きいほど大きな力を、後者が長いほど広い範囲の動きを実現できます。シリンダー内部のシール(パッキン)は高圧下で作動するため、経年劣化による油漏れが発生しやすい部分です。

 

  1. リリーフバルブ(Relief Valve)

リリーフバルブはシステム内の圧力が設定値を超えたときに、余分な油を逃がす安全弁です。過負荷による機器の損傷を防ぐ重要な安全装置であり、通常は油圧回路の始点近くに設置されています。

 

リリーフバルブが作動すると、「ヒューン」という高い音がすることがあります。この音が頻繁に聞こえる場合は、操作方法の見直しや機器の点検が必要です。安全装置として重要な役割を担うため、正常に作動することを定期的に確認することが大切です。

 

  1. アキュムレータ(Accumulator)

アキュムレータは圧力エネルギーを一時的に蓄える装置です。内部にガスとオイルの区画があり、圧力の変動を吸収したり、急な圧力低下時にバックアップとして機能したりします。

 

プリロード(初期充填)圧力が適切に保たれていないと、機器の動きが不安定になったり、エネルギー効率が低下したりするため、定期点検が重要です。特に寒冷地では、ガス圧が低下しやすいため、冬季前の点検が推奨されます。

 

  1. フィルター(Filter)

フィルターは作動油内の異物を除去する部品です。金属粒子やゴミなどの不純物は、バルブの詰まりやシリンダー内の傷の原因となるため、適切なろ過が重要です。

 

フィルターの性能は「ミクロン数」で表され、数値が小さいほど細かい粒子まで捕捉できます。ユニック車では通常、10〜20ミクロンのフィルターが使用されています。定期的な交換が必要な消耗品であり、交換時期を守ることで、システム全体の寿命を延ばすことができます。

 

メンテナンスとトラブルシューティング用語

  1. キャビテーション(Cavitation)

キャビテーションとは作動油内に気泡が発生し、これが崩壊する現象です。主にポンプの吸入側で負圧が生じたときに発生し、金属表面を侵食する「キャビテーションエロージョン」の原因となります。

 

「ザラザラ」という異音が特徴で、発生し続けるとポンプやバルブの深刻な損傷につながります。作動油の適切な温度管理や、吸入配管の抵抗低減が予防策となります。特に冬季の冷間始動時には注意が必要です。

 

  1. エア噛み(Air Entrainment)

エア噛みとはシステム内に空気が混入する現象です。作動油に気泡が混ざると、圧縮性が高まり、操作の遅れや不安定な動きの原因となります。

 

「スポンジのような感覚」や「操作に対するもっさり感」として現れることが多く、継続すると作動油の劣化も早まります。原因としては、油タンクの油面低下やシール部からの空気吸引などが考えられます。エア抜き作業を定期的に行うことで予防できます。

 

  1. 油温(Oil Temperature)

油温とは作動油の温度を指します。適正範囲は通常40〜60℃程度で、これより低いと粘度が高くなって効率が落ち、高すぎると潤滑性能が低下し、シールの劣化も早まります。

 

特に真夏の連続作業では80℃を超えることもあり、このような高温状態は避けるべきです。近年のユニック車には油温計が標準装備されていることが多く、常に温度を監視することが重要です。油温が高すぎる場合は、作業を一時中断して温度が下がるのを待つことが賢明です。

 

  1. 油圧ホース(Hydraulic Hose)

油圧ホースは柔軟性のある配管材で、可動部への油圧伝達に使用されます。内側から「内部チューブ」「補強層」「外皮」の3層構造になっており、高圧に耐える強度と、繰り返しの曲げに耐える柔軟性を兼ね備えています。

 

使用年数や環境によって劣化し、膨らみや亀裂が生じると破裂の危険があるため、定期的な点検と交換が必要です。特に紫外線や熱、油、薬品などにさらされる環境では劣化が早まるため、注意が必要です。

 

まとめ

ユニック車の油圧システムは、適切な知識と定期的なメンテナンスによって、その性能を最大限に引き出し、長期間安全に使用することができます。

 

油圧システムの基本原理を理解し、各部品の役割と相互関係を知ることで、異常の早期発見や効率的な運用が可能になります。特に重要なのは、作動油の管理と定期的な点検です。油の量、色、温度、異音などに常に注意を払うことで、小さな異常の早期発見につながります。

 

堀野モータースでは、中古ユニック車の販売だけでなく、適切な使用方法やメンテナンスのアドバイスも提供しています。油圧システムに関するご質問や不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。経験豊富なスタッフが、皆様のユニック車の安全で効率的な運用をサポートいたします。

 

※本記事の内容は2025年7月時点の情報に基づいています。最新の技術や製品仕様については、各メーカーの公式情報をご確認ください。

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